CBDがADHDに効果があると聞いたことはありますが、本当なのでしょうか。
本記事ではCBDとADHDについて、研究段階ではありますが効果があると考えられる理由、CBDを摂取する際の注意点についてご説明します。
CBDとは?
ADHDについて見ていく前に、CBDについてきちんとご説明します。
CBDが注目を集めている理由
CBDとはカンナビジオール(Cannabidiol)の略称で、多くの薬理作用をもっているということで注目が集まっています。
アメリカを中心に人気が集まっているのですが、その背景には1人の少女の物語があります。コロラド州に住む5歳シャーロットちゃんという少女はてんかん病を患っており、多くの抗てんかん薬を服用してもその痙攣が治ることはありませんでした。そこでアラン・シャックルフォードという医師がシャーロットちゃんにCBDの摂取を勧めました。結果として、CBDによっててんかん病による痙攣がほぼゼロになったそうです。
この出来事はCNNの医療レポーターによって報告され、以来CBDは健康に効果があるのではないかと注目を集めています。
CBDがもつ薬理作用とそのメカニズム
ではどうしてCBDは多くの薬理作用をもっているのでしょうか。
それは私たち人間や哺乳類(その他鳥類などにも)にはECS(エンドカンナビノイドシステム)という仕組みが備わっているからです。
ECSは食事や睡眠、記憶や免疫など、生きていく上で必要となる様々な機能を調整しています。そうすることで体のホメオスタシス(恒常性)を保っています。
ECSについて更に詳しく説明すると、人体には内因性カンナビノイドという体内で自然に生成される物質が存在します。その内因性カンナビノイド(アナンダミドや2-AGなど)が全身に存在するカンナビノイド受容体(CB1やCB2)と結合すると、周囲の細胞に具体的な指示を出すのです。
CBDはECSを正常化させる作用をもっています。内因性カンナビノイドはストレスなどの影響で生成されなくなってしまい、体に不調が現れるカンナビノイド欠乏症になってしまうことがあります。そのときにCBDなどの植物性のカンナビノイドを摂取することで、もともと不調だったECSを正常化させることができるのです。
CBDの薬理作用として具体的には、抗炎症作用・抗酸化作用・抗不安作用・神経保護作用・食欲抑制・疼痛緩和・依存症への効果・てんかん病・パーキンソン病・関節リウマチ・嘔吐への効果・全身性硬化症などなど、本当に多くの効果があるのです。
まだCBDやカンナビノイドの研究は、他の分野に比べると日が浅いので、まだ研究が必要ではありますが、多くの疾患への治療として期待が高まっています。
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大麻から取れるがCBDは合法
CBDは有機化学合成によっても作ることができますが、ほとんどは大麻草から抽出されています。
大麻と聞くと使っても問題のないか心配になりますよね。
しかし、CBDは合法なので安心してください。大麻草は大麻取締法によって規制されているのですが、大麻草のなかでも成熟した茎と種子やその製品は規制から除かれています。
日本において流通しているCBD製品は基本的にはこの法律に則っており、茎や種子から取れたCBDを使用しているため、違法となることはありません。
それでもやっぱり心配となるとは思いますので、詳しくはこちらもチェックしてみてください。
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ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?
CBDについて理解していただいたところで、ADHD(注意欠陥・多動性障害)についてもどのような症状があるのかや特徴を見ていきたいと思います。特にこの数年はADHDという言葉を見ることが多く、自分もそうなのじゃないかなと思った方も多いかと思います。どのような特徴や症状があるのかをご説明します。
ADHDの症状や特徴
ADHDとは発達障害の1種であり、年齢に見合わない不注意さや衝動性(即座に行動してしまうこと)、落ち着きの無さが特徴です。
20人に1人の子どもがADHDと言われていますが、年齢が上がるにいれて多動性が目立たなくなったりして診断の枠には収まらなくなり、だいたい2.5%ほどがADHDと考えられています。
ADHDは不注意と多動/衝動性に分けられて症状を見られることが多いです。ここでは少しだけよくある症状を紹介します。
▽ADHDのよくある症状
- 忘れっぽかったり、よくものをなくしたりする
- 手足がそわそわして動かしたり、授業中などでも席を立ったりする
- 気が散りやすく、集中し続けることができない
- 整理整頓が苦手
- いつも落ち着かない感じがあり、順番を待ったりするのが苦手
年齢が上がるとにつれて少なくなっていくADHDですが、逆に大人になってから診断がつくことも多いです。というのも、小さいときにも不注意や衝動性などで悩みがあっても成長するにつれて工夫や対策を考えたりしているからです。しかし、社会に出ることで、その症状がより表れやすくなったり、周りに指摘されたりすることが多いからです。
もし自分がADHDなのじゃないかと思われる方は、診断を受けてみても良いかもしれません。
ADHDの原因・メカニズム
ADHDの原因は現段階では詳しくはわかっていません。育て方などが原因というわけではなく、生まれつき脳に何らかの異常があるのではと考えられています。
原因と考えられているものとして、脳内の神経伝達物質の不足・前頭前野の機能調整の偏りが主に考えられています。
前者の神経伝達物質の不足ですが、神経伝達物質にはドーパミンやノルアドレナリンなどの意欲や興奮に関わるものと、セロトニンなどの抑制に関わるものがあります。これらの不足によってADHDの症状が出るのではないかと考えられています。
後者の前頭前野の機能調整ですが、前頭前野は思考・判断・注意・コミュニケーション・計画などの機能を司っていると言われています。この前頭前野の機能調整がうまくいかないことで、多動性・衝動性・不注意などがあらわれるのではと考えられています。
ADHDの治療方法:心理社会的治療・薬物療法
ADHDの治療方法としては心理社会的治療と薬物療法に分けられます。
心理社会的治療とは、保護者や教師などの関係者がADHDの特徴を理解することで摂るべき行動を理解しやすくする対応をする環境調整、保護者が望ましい行動を増やすための接し方や方法を学ぶペアレントトレーニング、社会のマナーやルールを学んで対人関係を良好に保つソーシャルスキルトレーニングなどがあります。
薬物療法とは、抗ADHD薬といわれる薬を処方する治療方法です。特に、ノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質の不足を改善する効果をもっているものが処方されます。
薬物利用で出されている薬は以下の3つが中心的です。
- コンサータ(メチルフェニデート):ノルアドレナリンとドーパミンの働きを強めて、集中力のなさや衝動性の緩和が期待できる。ゆっくり効き、依存のリスクも少ないと言われている。
- ストラテラ(アトモキセチン):ノルアドレナリンの働きを強める。コンサータと比べると比較的優しい薬で副作用が少ない。
- インチュニブ(グアンファシン):神経伝達物質をより多く取り込めるようにする。
これら以外にもADHDには2次障害として不安や鬱のがある場合があります。そういった場合には抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。
参考:
CBDはADHDに効果があるのか?
そんなADHDですが、CBDは効果があるのでしょうか?健康に関わるためしっかりとご説明していきます。
まだ研究段階で効果があるとはいえない
ADHDがCBDによって改善されたという声はあります。しかし、現状CBDがADHDに効果があると言い切ることはできなく、残念ながらまだ研究段階と言えるでしょう。
また、研究としてはCBD単体ではなく、大麻を対象としたものが多いです。
もちろん、今後の研究によってCBDがADHDに効果があると示される可能性もありますが、大麻草にはCBD以外にもTHCやCBNなど100種類異常存在しているので、CBD以外のカンナビノイドが作用している可能性もあります。ちなみに、カンナビノイドはそれぞれで持っている薬理作用が異なっています。
抗不安作用や受容体への作用がADHDに効果がある可能性
研究段階ですが、どうしてCBDがADHDに効果があると言われているのでしょうか。
それはカンナビノイド受容体が注意欠陥に関係する脳の部位に多く存在していることと、神経伝達物質の受容体に関わりがあるからです。
カンナビノイド受容体は全身に存在していますが、特にCB1は脳にも多く存在しています。まだ詳しいことはわかっていないですが、CBDがCB1と結合することでADHDに良い影響を与える可能性があります。
また、CBDはセロトニン5HT1A受容体と結合して脳内のセロトニンの利用率を増加させるという効果があります。この効果は、脳内の神経伝達物質が原因と考えられているADHDに良い影響を与えるのに加え、2次障害として見られる不安や鬱にも良い影響を与えます。
今後の研究でCBDとADHDの研究がされていけば、治療の選択肢の1つになる可能性はあるかもしれません。
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ADHDのためにCBDを使う際の注意
研究段階であり、科学的にADHDに効果があるとはいえないですが、もしCBDの摂取を考えている方に向けて注意点をご説明します。
そもそもCBDは安全なのか?
まず気になるのはそもそもCBDの安全性は高いのかどうかです。
安全性については2017年にWHOが正式な見解を出しているため、そちらを参考にします。
CBD の潜在的な治療効果を数多くの管理されたオープン試験を横断的にみると、良好な安全なプロフィールをもち、一般的に良好な忍容性(許容性)がある。 ヒトにおいて CBD は、乱用あるいは依存可能性を示唆する作用を示さない。
引用元:カンナビジオール(CBD)事前審査報告書(日本語版)
この内容によると、CBDは乱用・依存の可能性がないのはもちろん、副作用の程度も良好ということがわかります。
つまり、CBDの成分自体は安全性が高いと言えるでしょう。
子供のCBD摂取に注意
本記事のはじめに5歳の少女がCBDを摂取することでてんかん病の痙攣がなくなったということはご説明してきました。
しかし、国や地域によって多少違いはありますが、CBDの購入に年齢制限を設けている事業者も多いです。
これは、体の小さいこどもがどのくらいCBDを摂取するべきかがわからなかったり、CBD自体の研究は日が浅いのでまだわかっていないことも多いということが理由です。
未成年の方には特別な理由がない限り、CBDの摂取は控えたほうが良いでしょう。
なお、CBDの成分自体に年齢制限はなく、事業者は自主規制をしています。
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薬物相互作用に注意
一般的に薬には薬物相互作用というものがあります。
これは、複数の薬が血中に存在することにより相互作用を及ぼし、副作用が生じたり薬の作用の程度が変わったりする場合があるということです。
CBDはどの薬と薬物相互作用を及ぼすことがあるのかはわかっていないこともあります。そのため、薬を常服している方はかかりつけ医に相談するなど十分気をつけてください。
終わりに
本記事ではCBDとADHDの関係性について見てきました。
現状では科学的根拠をもってCBDがADHDに有効であるとは言えないことはご説明しましたが、今後の研究で明らかになってくることもあると思います。
また、CBDは睡眠の改善などの面で他にも多くの効果を持っています。もし悩んでいる症状がある方は、そこについても調べてみるのが良いと思います。